新型コロナ「第7波」感染拡大 -基本的な感染対策とワクチン接種を-
【2022年8月11日現在】
オミクロン株による新型コロナ「第6波」、そして過去最大の「第7波」
2021年の夏に流行したデルタ株による新型コロナ「第5波」は11月に収束しましたが、12月から全世界でオミクロン株が流行し、2022年1月から日本でも感染者が急増し「第6波」が拡大しました。感染者数は2月のピークから6月にかけて徐々に減少したものの完全に収束することなく、7月から再び感染が急拡大し「第7波」となって猛威をふるっています。
新型コロナ「第7波」の現状
7月から新型コロナウイルスの流行が急速に拡大していますが、その原因とみられているのがオミクロン株BA.5という系統のウイルスです。このBA.5はこれまで流行していたBA.2と比べて感染力が高いという特徴があり、国内では6月から7月にかけて置き換わりが進んだため、現在各地で感染が拡大していると考えられています1)。
国内の新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は、7月から増加傾向となり、8月には全国で20 万人を超える日が続いています。そして8月10 日には25万人を超えて過去最多を更新しました2)。これは2021年夏の第5波のピークの2万5千人の約10倍になります。
一方、国内の重症者数も増加しており、現在603人と報告されています2)。都道府県の病床使用率も約50~70%に上昇しており、今後さらに増加すると第5波と同じような状況になるかもしれないので注意が必要です。
https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html#h2_1
岡山県の新型コロナウイルス感染状況
岡山県においても7月から感染者数の増加が続いています。新規感染者数は7月20日に1133人、27日に2272人、8月3日に2996人と急激に増加しており、8月10日には3315人と過去最多を更新しました3)。病床使用率も8月10日の時点で62.2%まで上昇しており3)、医療提供体制が逼迫してきています。
政府はBA.5による第7波の感染拡大を受けて、7月29日に「BA.5対策強化宣言」を新設しました4)。これは緊急事態宣言やまん延防止等重点措置とは異なり、行動制限は行わず、基本的な感染対策の徹底やワクチン接種を呼び掛けたり、高齢者などに対して混雑した場所への外出自粛を要請したりする宣言です。8月10日現在、岡山県を含む21の自治体がBA.5対策強化宣言を出しています5)。一方、「すでに同様の措置を取っている」「メリットがない」といった理由で宣言を見送る自治体もあります6)。
岡山県BA.5対策強化宣言」啓発データ
https://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/324599.pdf
新型コロナウイルスの治療薬7)
新型コロナウイルスの感染拡大が始まった当初の2020年は、ウイルス感染による過剰な免疫反応を抑える対症療法が主な治療でした。炎症を抑制するステロイド薬「デキサメタゾン」やヤヌスキナーゼ阻害薬「バリシチニブ」などが新型コロナウイルスによる肺炎に用いられました。
その後2021年にウイルスの増殖を抑える抗体薬が登場しました。2種類の抗体を組み合わせた「カシリビマブ・イムデビマブ」や「ソトロビマブ」は、抗体がウイルスに結合し細胞内に侵入しにくくする中和抗体薬で、点滴で用いられる治療薬です。
そしてウイルスの遺伝子(RNA)複製を阻害する「モルヌピラビル」や、ウイルスの増殖に必要なたんぱく質の合成を阻害する「パクスロビド」といった経口薬も登場しました。残念ながら感染したすべての人に使えるわけではなく、軽症から中等症で重症化リスクのある人などが対象となります。
2022年8月現在、新型コロナウイルスに対する国産の治療薬はなく、今後の開発に期待したいと思います。
COVID-19の重症度と治療の考え方
https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_drug_220218.pdf
新型コロナウイルスのワクチン8)
2021年2月から日本国内でワクチン接種が開始となり、現在2回接種完了者は全人口の80%を超えています。しかし2回接種から数か月経つと発症予防効果が減ることがわかり、2021年12月から3回目の接種が開始されました。そして2022年6月から60歳以上の高齢者と基礎疾患のある人を対象に4回目接種が開始されています。
これまでに日本では、mRNAワクチンのコミナティ筋注®(ファイザー) 、スパイクバックスTM筋注(モデルナ)、ウイルスベクターワクチンのバキスゼブリアTM筋注(アストラゼネカ)が使用されてきました。2022 年 6月から組換えタンパク質ワクチンのヌバキソビッド筋注®(ノババックス) が3 回目接種に使用されています。
2022年2月から18歳以上、3月から12歳以上にも3回目接種ができるようになりましたが、若い世代の3回目接種率は50%以下と低い状況が続いています。また2022年3月から5~11歳への接種が開始されましたが、2 回接種率は 6 月 27 日時点で 15.7%と低い水準にとどまっています。
感染拡大防止のために
2022年8月現在、オミクロン株BA.5による新型コロナ「第7波」は収束する兆しが見えません。全国の新規感染者数は依然増加傾向が続いており、人口10万人あたりの新規感染者数は29都府県で1000人を超えるなど高い感染レベルが続いています。また病床使用率も上昇し、36都府県で50%を超え、10県では70%以上になっています。8月10日、厚生労働省に新型コロナウイルス対策を助言する「アドバイザリーボード」は「救急搬送困難事例の増加や医療従事者の欠勤などで、コロナだけでなく一般医療を含め医療提供体制に大きな負担が生じている。今後の深刻化が懸念される」と強い危機感を示しました9)。これ以上の感染拡大を防止するために、できる限り3回目あるいは4回目のワクチン接種を完了すること、そして今後も手指消毒やマスク着用、こまめな室内の換気といった感染対策をしっかり続ける必要があります。
https://corona.go.jp/
参考資料
- 感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株について (第19報),国立感染症研究所ホームページ
- 新型コロナウイルス感染症について(2022年8月11日現在),厚生労働省ホームページ
- 新型コロナウイルス感染者状況について,岡山県ホームページ
- 新型コロナウイルス感染症対策本部(第95回)配布資料,内閣府ホームページ
- 新型コロナウイルス感染症対策,内閣官房ホームページ
- 毎日新聞ニュース(2022年8月10日),毎日新聞ホームページ
- COVID-19 に対する薬物治療の考え方 第13.1版,日本感染症学会
- COVID-19 ワクチンに関する提言(第5版),日本感染症学会
- 毎日新聞ニュース(2022年8月11日),毎日新聞ホームページ