新型コロナ「第4波」、そして3回目の緊急事態宣言

変異ウイルス猛威の「第4波」、はたして緊急事態宣言の効果は?

【2021年5月5日現在】
前回、2020年12月に記事1)を掲載した時はちょうど新型コロナウイルス感染症の第3波が全国に拡大している頃でした。そして年末年始にさらに新規感染者数が増加し、2021年1月7日に2回目の緊急事態宣言が発令されました。なかなか感染が収束せず当初の解除予定は延期されましたが、2月になり感染者数が減少したため大阪府、兵庫県などでは2月28日まで、東京都、神奈川県などでは3月21日までで緊急事態宣言が解除されました。
しかし3月下旬から再び大阪府や兵庫県で感染者が急増し、また変異ウイルスが多く検出されるようになりました。

その後全国に変異ウイルスによる感染が拡大していることが明らかになり、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は「第4波に入っているのは間違いない」と述べています2)。そして大阪府、東京都など4都府県に、4月25日から3回目の緊急事態宣言が発令されました。

新型コロナ「第4波」の特徴とは

現在の国内の新型コロナウイルス感染症の状況と、第4波の特徴についてこれまでの第1波、第2波、第3波と比べてみたいと思います。

厚生労働省の統計によると、国内の新型コロナウイルス感染症の患者数は1月から2月にかけて減少したものの、3月から再び増加に転じており、5月5日現在まだ増加傾向にあります。新規陽性者数は毎日約4000人以上、入院治療を必要とする患者数も約60000人以上と報告されています3)。陽性者数や入院治療を必要とする患者数について、第4波は第1波、第2波より多いですが今のところ第3波のピークまで到達していません。しかしまだ増加傾向が続いているため、今後第3波を超える可能性は十分にあると思います。

第4波の一つの特徴は、重症になる患者の割合が多いという点です。
現在の陽性者数はまだ第3波より少ないにもかかわらず、重症患者数は5月2日に1050人と第3波のピークを越え、5月5日には1114人と過去最多を更新しています3)。また死亡者数も徐々に増加しており、これまでに累計で約10000人以上の方が新型コロナウイルス感染症で亡くなっています3)。現在、重症の新型コロナウイルス感染症で入院治療を必要とする方が増加しており、今後ますます医療体制を逼迫することが懸念されています。
もう一つの特徴としては、変異ウイルスが全国的に検出されているということです。
とくにイギリスなどで見つかった「N501Y」と呼ばれる変異が起こったウイルスは、感染力が従来のものより強いとされています。この変異ウイルスによる感染が広がっていることが、全国の自治体の調査で確認されています。変異ウイルスの感染拡大と重症患者数の増加との関連が指摘されており、東京医科大学の濱田篤郎特任教授は「変異ウイルスが広がっていることが一番の理由ではないかと思う。これまでは、感染してから重症化するまで2週間ほどかかり、重症者の数は遅れて増えてくるという認識だったが、最近はいきなり重症化するケースも多いようだ」と指摘しています4)
したがって、これまで以上に厳格な感染症対策が必要と考えられます。

岡山県の新型コロナウイルス感染状況は「ステージ3」に

岡山県においては、2月から3月にかけては陽性者数が低く抑えられていましたが、4月になり急に新規陽性者数が増加し、またクラスターの発生も報告されています5)。岡山県は4月23日に県内の新型コロナウイルス感染状況について、4段階の切迫度で2番目に高い「ステージ3(感染急増)」に引き上げましたが6)、その後も連日50人以上の新規感染が報告されています。また4月28日時点の新型コロナウイルス患者向けの病床使用率は前週の40%から54%に上昇し7)、政府の対策分科会が示す「ステージ4(爆発的感染拡大)」の目安である50%以上に達しています。そして5月2日には1日の新規陽性者数が114名とこれまでの過去最多を更新しました5)
引き続き岡山県の新型コロナウイルス陽性者数、入院患者数および病床使用率の推移を注視する必要があります。

5月から本格的な高齢者のワクチン接種開始へ

マスクの着用や手洗いの励行など、多くの方々が感染防止対策を継続しているにも関わらず、新型コロナウイルス感染症の収束する兆しがなかなか見えません。新型コロナウイルス感染対策の切り札として、現在最も期待されているのがワクチン接種です。海外ではすでに住民へのワクチン接種がある程度進んでいる国もありますが、わが国でのワクチン接種は他国に比べてかなり遅れをとっています8)(下図)。

2月17日から始まった医療従事者のワクチン接種はまだ2割程度しか完了していませんし、高齢者を対象にしたワクチン接種は4月12日から開始されたところです9)。岡山県ではいよいよ5月17日から施設入所者以外の高齢者のワクチン接種が開始されます10)。まず医療従事者や高齢者、そして基礎疾患のある方や高齢者施設従業者、さらに一般の方へとワクチン接種がすすむことにより、新型コロナウイルスの感染者が一刻も早く減少することを期待しています。

参考資料

1) 「新型コロナウイルスの感染「第3波」が全国に拡大しています」,当院ホームページ.
2) NHKニュース(2021年4月14日),NHKホームページ.
3) 新型コロナウイルス感染症について(2021年5月5日現在),厚生労働省ホームページ.
4) NHKニュース(2021年5月2日),NHKホームページ.
5) 岡山県内における新型コロナウイルス感染症の患者発生状況(2021年5月5日更新),岡山県ホームページ.
6) 新型コロナウイルス感染症に関する知事メッセージ(2021年4月23日),岡山県ホームページ.
7) 療養状況等及び入院患者受入病床数等に関する調査について(2021年4月21日0時時点、2021年4月28日0時時点),厚生労働省ホームページ.
8) チャートで見るコロナワクチン(2021年5月3日),日本経済新聞ホームページ.
9) 特設サイト新型コロナウイルス(2021年5月2日),NHKホームページ.
10) 高齢者向け新型コロナワクチン接種のお知らせ(2021年4月30日更新),岡山県ホームページ.

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